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2000年に頼みの綱のGが2度金融政策を誤ったため、株価ばかりではなく実体経済の中核であるオールドエコノミーにまで亀裂が入り始めてしまっている。
もはや、「ドル価値」を維持するには、「強いドルを望んでいる」という口先介入をしても、アメリカ経済そのものに不信感がめばえ始めているので、神通力は失せている。 「ドルを直接強化」しなければ、すでに実体経済が悪化しているので、口先介入すればするほど実際はもっと悪いのではないかと邪推され、ドルは売られるだろう。
市場とはそういうものだ。 では、「ドルを直接強化」する方法はあるのか。
ある。 それは「金本位制復帰」を行い、「ドル」と「金」を結びつけることである。
「金の価値」によって「ドルの価値」を補強するのである。 「金」には「本源的価値」がある。
また、「金」は「富の象徴」でもある。 現在世界中の通貨はすべて管理通貨とよばれる不換紙幣である。

どこの国の紙幣も極論すれば「紙とインク」を原材料とする通貨にすぎないのだ。 いずれの国も、通貨発行権は国家主権の一つとして、国家が独占している。
これをビジネスと考えれば、その収益性は、くすり九層倍どころの話ではない。 国家は法律で「紙とインク」でできた「紙幣」を「法貨(リーガルテンダー)」として、強制通用力をもたせ、「紙幣」から無限大にちかい通貨発行特権(シニョレッジ)をえている。
しかし、「紙幣」に価値があると考えるのは共同幻想にすぎない。 「ドルに対する信認(為替レート)」もつきつめれば、共同幻想である。
購買力平価が基準となるといわれても、「変動相場制」のもとでは、市場のセンチメント(心理)次第で大きく乱高下する可能性もある。 今ドルはこのような危機にさらされているのだ。
「国債」はもとより「紙幣」も、「国家の借用証」である。 ところが「金」は誰の借用証でもない「資産」である。
それ自体に固有の価値をもつ富である。 ちなみに銀行預金残高は銀行の借入残高であり、有価証券といわれる多くは発行体の負債である。

冷戦崩壊後に唯一超大国となり「独り勝ち経済」を謡歌していたアメリカ経済が、まさかの大変調、ハードランディングの瀬戸際にたたされ、「適正な政策」がうてなければ、アメリカのクレジットクランチが世界同時株安を誘発し、市場の反応の仕方によっては、大恐慌のシナリオすら考えられなくはない立場におかれた。 歯車が逆回転し始めれば、アメリカ経済の弱点といわれる「対外債務の増加」「過剰消費」「過少貯蓄」などに市場の関心が集中する可能性が高く、「史上最長の景気拡大の終篤」が明確になれば、一気にドルが売られる。
こうした状況は1985年ごろのサステナビリティ問題(対外純債務の増加によるドルの急落懸念)を連想させる。 再びドルを根本的にてこ入れせざるをえない状況に追いこまれてしまったのである。
今後、特に大きな問題となるのは、「4000億ドルの経常赤字」である。 アメリカは主観的には、「アメリカは基軸通貨国だから輪転機を回し続ければいい」と開き直るだろうが、国際金融市場では従来の反応とは異なって「史上最長の景気拡大の終篤」を転機として、「ドル安」は不可避との市場のセンチメントが急増するに違いない。
そのときアメリカが「ドルの急落」をふせぎ「ドル高」を維持しようとすれば、「ドル」と他国の「紙幣」との差別化が必要となる。 その解決策として、アメリカは「ドル」を他国にさきがけて「本源的価値」をもつ「金」と交換性をもたせる、と世界に高らかに宣言することだ。
つまり、「金本位制復帰」の宣言を行うのである。 これを行えば「ドル」は、あらゆる現存する「紙幣」に対して差別化できるのである。
これは1971年の「N・ショック」で、一時的に金との窓を閉ざす」とした「ドル」と「金」の交換再開である。 「独り勝ち経済」がほころび始めているので、もはやこの方法以外の「ドル強化策」は考えられない。
アメリカは戦略的為替論に立脚しN・ショック以後、アメリカ経済の再生と強化に「為替を武器」にしてきたが、どうして今「金本位制復帰(ひいては固定相場制)」にもどろうとするのかとの疑問がわくに違いない。 1960年代末から1970年代初頭にかけてアメリカ経済は日本と西ドイツにモノ作りの経済競争で追いつかれた。
モノ作りの経済競争では、「ドル安」は競争上の武器となる。 1980年代にドル安円高を演出しながら、同時に日本からカンバン方式などの「日本的ノウハウ」の吸収につとめた。
その結果「独り勝ち経済」を手にいれた。 日本にハゲタカファンド外資系金融織関が不良債権を破格値で買いあさる行為のことで、弱った獲物を狙うハゲタカにたとえていわれるは1985年に「プラザ合意」で低金利政策を強要し、1989年の「日米構造障壁除去協議(日米構造協議)」で「土地価格の下落」と「持ち合い株式の解消」を強要した。
当時の自民党政権はアメリカのこれらの外圧に無血開城をしたのである。 日本側から見ると「バブルの形成」と「バブルの崩壊」である。

日本の国家資産は1989年末とくらべると土地価格と株式価格の下落で1000兆円以上も消失している。 アメリカから見れば、日本の競争力の源泉を叩きつぶすことに成功したのである。
もはや日本は競争相手として恐れる必要はなくなったということである。 今アメリカが日米経済関係で考えていることは、対外的な競争力のある日本の超優良企業をいかに安く買い叩くかにある。
もうたんなるモノ作りの競争力を競う時代は終わったのである。 世界中の超優良企業をどうやって安く買うかという「資本主義最後の競争形態」に、世界経済のステージが進化したのである。
Rップルウッドなどのハゲタカファンドは、死に体の企業を安く買いあさっているが、これからはドラキュラのように生きている元気な超優良企業の生き血を吸い取り仮死状態にして、M&Aを仕掛けようとしているのだ。 これは資本の競争だから「ドルが強ければ強いほどアメリカは有利」なのである。
「ドルへの信認」が高く「ドル高」であれば世界のマネーはアメリカに集中するし、アメリカの株価も上昇して株式時価総額も増大する。 増殖した時価総額はM&Aには鬼に金棒となる。

アメリカが「ドル安」に依存する時代はすぎさったのである。 「ドル高」がアメリカ経済に有利な状況になったので、「ドル高」をアメリカは死守せざるをえないのである。
「ドル高」を演出するには、「金本位制復帰」は最高の舞台装置になるのである。 私が「アメリカが金本位制復帰を虎視耽々と狙っている」と考えるのは、「戦略的金本位制復帰」を行うために必要とされる「基本的3条件」をアメリカはすでにクリアしているからである。
その第1条件は、「アメリカは独り勝ち経済を達成した」ことである。 第2条件は、「ソ連を倒し、冷戦を終結させた」ことである。
第3条件は、「アメリカは官民で十分な金備蓄を完了した」ことである。 準備はすべて完了したのである。
ここでは、アメリカの金戦略の立案段階の話と、そのための根回しと政治経済戦術のプロセス、そして今後の「金戦略に基づく第2次パクスァメリカーナ覇権構想」について話をすすめることにする。

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